気になる本とモノ
2007
報道被害
評価☆☆☆ 梓澤和幸 岩波書店
強烈だけど、分かりやすいタイトル。
「メディアスクラム」など、
報道機関の取材や報道によって、
被害を受けた人たちを守る弁護士が書いた本。
警察に逮捕されたケースや、
過去のスキャンダルが報道されそうになったケースなど、
マスメディアが引き起こした、具体的な事例を引用して説明しています。
芸能人のスキャンダルのような
派手な事例はあまりないのは、さすが岩波新書。
◆「報道被害」のあらすじ
「報道被害と向き合う」
「松本サリン事件報道・再考」
「犯罪被害者への取材と報道」
と具体的な実例と被害の例を紹介しています。
そして、被害を受けた場合の対応策として
「報道被害とたたかう」
「報道不信とメディア規制」
があります。
ランビック 報道被害救済弁護士ネットワーク
という組織で、報道機関と闘う弁護士の活動が
紹介されていました。
メディアの被害で悩んでいる方は
知っておきたい名前ですね。
最後に、報道被害が発生する原因として、
「現場の取材陣から編集局幹部まで報道機関全体をつらぬかれている、
警察情報に過度に依存したシステムの見直しこそが要求されている」
と強く指摘しています。
内容的に実現不可能な提案が多いので、
急に変わるようなことはないと思うんですが、
メディアの人にはぜひ勉強してほしい内容ですね。
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◆「報道被害」の気になる言葉
14 ペーパートライアル つまり新聞が裁いてしまってよいのか
86 匿名であっても周辺の人々が記事の属性から本人と認識できるような報道は、名誉毀損罪の要件を備えるとする重要な判断でした
98 新聞社側はお詫びの見出しを出すことに強く抵抗します。
104 報道機関に過ちを認めさせ、適切な訂正、謝罪を求めるためには、メディアと取材の実態を生き生きと把握している弁護士が被告者をサポートすることが大切です。
111 仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項にいう検閲にはあたらない。またきわめて厳密な要件のもとに行う限り、事前抑制だからという理由で表現の自由を保障した憲法二一条一項に違反するものでもない 1986年6月の最高裁判断です
166 国家公安委員会が定める規則、犯罪捜査規範二五条が、事件について報道機関に発表を行う権限を、「各県警警察本部長、操作本部長またはその指定する者」に与えているだけです。
199 編集権論とは一言で言うと、ジャーナリズムの使命と経営の利益のバランスをとる責任と権限は経営者に専属するという考え方です。極端にいうと、ジャーナリズムを担う会社のあり方について現場の記者は批判発言の権利はない、ということになります
205 大学の四年間でリベラルアーツ(一般教養)を学んだのち、二年制ないし三年制の大学院のジャーナリスト・コースで教育を受け、そこを卒業してジャーナリストになるという事例が多い…欧米の例として